梅毒とはどんな病気?症状や感染経路と検査・治療方法について

梅毒は日本でも昔からよく知られている性感染症の一つで、治療法が確立するまでは不治の病として恐れられていました。日本国内では、ここ数年で感染者数が急増している傾向があり、流行の兆しを見せています。

このページでは、梅毒の症状や感染経路などについて、詳しく解説していきます。

梅毒とは、どんな病気?

梅毒とは、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum,TP)という細菌を原因菌として発症する性感染症です。

症状は第1期から第4期まで病気の進行状況で変わり、末期症状まで進み何も治療を施さなかった場合は死に至る恐ろしい病気ですが、現代では治療方法が確立され早期治療で完治させることが可能となっています。

江戸時代から不治の病として恐れられた病気

記録によると日本には1512年に上陸したとされ、江戸時代には花街の遊女と利用客を中心に大流行し、花柳病と呼ばれ不治の病として恐れられていました。

加藤清正、結城秀康、前田利長、浅野幸長といった武将たちも、梅毒で命を落としたとされています。

梅毒は、いま日本で感染者が急増している

厚生労働省ホームページで公開されている性感染症報告数では、梅毒の感染者数は以下のグラフの通りに推移していると発表されています。

総数
平成11年4~12月751482269
平成12年759512247
平成13年585400185
平成14年575395180
平成15年509388121
平成16年533408125
平成17年543411132
平成18年637441196
平成19年719521198
平成20年827615212
平成21年691523168
平成22年621497124
平成23年827650177
平成24年875692183
平成25年1,228993235
平成26年1,6611,284377
平成27年2,6901,930760
平成28年4,5753,1891,386
平成29年5,8263,9311,895
平成30年7,0014,5882,413
出典:性感染症報告数(厚生労働省)

2011年(平成23年)以降に飛躍的な伸びを見せており、2018年(平成30年)には感染者数が7,000人を超え、10年前のおおよそ10倍の感染者が報告されています。

総数0~9歳10~19歳20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60歳以上
平成11年4~12月7512161561289389267
平成12年759717168128103112224
平成13年5854201491048972147
平成14年5757241301356387129
平成15年509419122128748775
平成16年533523152138926063
平成17年543322144151827170
平成18年6371032162192928069
平成19年71962017819312610393
平成20年8271030193211174107102
平成21年6915211821941248085
平成22年621191561879067111
平成23年82752419524414477138
平成24年87542720924219486113
平成25年1,228443309341248123160
平成26年1,661967432432381139201
平成27年2,69014103812679597245240
平成28年4,5751615114461074995486407
平成29年5,8268189185014091204639527
平成30年7,00119303225316211484778543
出典:性感染症報告数(厚生労働省)

年代別で見ると20代~40代が過半数を占めていますが、出生時の母子感染による先天性梅毒も確認されている状況です。

海外でも感染者が増加傾向にある病気

日本で感染が問題視されている梅毒ですが、広がりを見せているのは国内だけではありません。

アメリカの性感染症患者数

クラミジア淋菌感染症梅毒
2014年1,441,789350,06263,454
2015年1,526,658395,21674,707
2016年1,598,354468,51488,053
2017年1,708,569555,608101,584
2018年1,758,668583,405115,045
出典:2018 STD Surveillance Report | CDC

米疾病対策センター(CDC)が発表した「2018 STD Surveillance Report 」によると、アメリカ国内の梅毒感染者数は2014年から2018年にかけて2倍近い数字となっており、115,045人の感染者が確認されています。

その中でも特に問題視されているのが、母子感染による先天性梅毒です。

出典:2018 STD Surveillance Report | CDC

2014年の462件から、2018年には1,306件と約3倍近い件数が確認され、CDCも警鐘を鳴らしている状況となっています。

梅毒の症状は?

梅毒の症状は、感染から経過した期間によって場所や内容の異なる多様な症状が現れますが、放っておくと自然と症状が消え潜伏期間に入ります。

このように、梅毒は症状が現れるのと潜伏を繰り返し進行してきますが、感染から経過した期間によって大きく4つの種類に分類されます。

  1. 第一期梅毒(感染から約3週間)
  2. 第二期梅毒(感染から約3ヶ月)
  3. 第三期梅毒(感染から約3年)
  4. 第四期梅毒(末期症状)

なお、第1期と第2期で症状が確認された場合を早期顕症梅毒、第3期と第4期で臓器に症状が見られた場合を晩期顕症梅毒と呼びます。

当然ながら症状が進むほど深刻になり、第4期梅毒まで進むと末期症状となり様々な病気を引き起こし、治療をしなければ命を落とすこととなります。

第1期梅毒(感染から約3週間後)

梅毒に感染すると、3週間~6週間程度の潜伏期間を経て、第1期梅毒の初期症状が現れ始めます。

性器・肛門・口唇部・口腔内などの感染部位に、初期硬結と呼ばれる小豆大くらいの大きさのしこりができ、これが破裂すると硬性下疳という潰瘍になります。

そのほか、鼠径部を中心に痛みの伴わないリンパ節の腫れが出ることもあります。

これらの初期症状は、放っておいても2~3週間程度で症状が消えてしまうため気付かない人が多く、知らない内にパートナーに感染を広げてしまう要因となっています。

第1期梅毒は・・・

  • 初期硬結というしこりができる
  • 硬性下疳という潰瘍ができる
  • リンパ節の腫れができる
  • 症状は時間とともに消える

第2期梅毒(感染から約3ヵ月後)

第1期梅毒の症状が消えてから潜伏期間に入りますが、梅毒の原因菌は血液を介して全身へと広がっていきます。

感染から3か月後を目安として、以下のように様々な症状が現れます。

風邪に似た症状
発熱や関節痛などの症状がでて、倦怠感を感じることがある。また、第1期梅毒のようにリンパ節の腫れが起きる。
梅毒性バラ疹
全身に1~2cm程度の薄紅色の発疹が現れ、特に手のひらや足の裏などに多く見られるようになります。見た目が小さなバラの花に見えることからバラ疹と呼ばれています。
丘疹性梅毒疹
小豆大くらいからエンドウ豆大程度の大きさで、赤褐色から赤銅色の丘疹性梅毒疹と呼ばれる結節ができます。梅毒性バラ疹と同様に全身に出ますが、特に手のひらや足の裏などに多く現れます。
梅毒性乾癬
手のひらや足の裏に乾癬に似た皮疹が現れ、乾燥すると銀白色のフケのようになります。
扁平コンジローマ
肛門や性器周辺といった皮膚が互いに接する部分に、ピンク色から灰白色で扁平に隆起した丘疹ができます。梅毒の原因菌が多く含まれているため、感染を広げやすい患部と言われています。
梅毒性アンギーナ
口腔や咽頭の粘膜に炎症やただれを起こし扁桃炎のように腫れ上がります。扁平コンジローマ同様に梅毒の原因菌が多く含まれ、高い感染力があるとされています。
梅毒性脱毛
前頭部や側頭部に広範囲で起きるびまん性の脱毛や虫食い状に起きる脱毛などが起こります。
膿疱性梅毒疹
化膿したような黄色い膿を含んだ発疹が全身に発生します。

これらの症状は、特に治療を施さなくても治まりますが、梅毒が治ったわけではなく引き続き症状は進行していきます。

第2期梅毒は・・・

  • 風邪のような症状がでる
  • 梅毒性バラ疹・丘疹性梅毒疹・梅毒性乾癬・扁平コンジローマと呼ばれる発疹や皮疹ができる
  • 口の中で梅毒性アンギーナと呼ばれる炎症が起きる
  • 髪の毛や眉毛が抜けることがある
  • 全身に膿を含むできものができる
  • 症状には個人差があり、時間とともに消える

第3期梅毒(感染から約3年以上経過)

梅毒に感染してから約3年ほど経過した状態が第3期梅毒となり、体内に入り込んだトレポネーマ・パリダムが全身へと広がった状態となります。

梅毒の症状として有名なゴム腫と呼ばれる大きなしこりができ、皮膚から筋肉などを破壊しながら侵食していきます。さらに、しこりの表面が崩れ落ち潰瘍となる結節性梅毒などの症状が現れます。

ただし、医療技術の進化により、このような症状が見られることは少なくなりました。

第3期梅毒は・・・

  • ゴム腫と呼ばれる大きなしこりができる
  • 結節性梅毒などの症状が現れる
  • 現代ではここまで症状が進むことは少ない

第4期梅毒(末期症状)

第4期梅毒まで症状が進行すると、臓器や神経などに様々な重い症状を引き起こします。

大動脈炎大動脈瘤といった血管に関する症状や、血管梅毒・進行性麻痺・脊髄癆などの神経梅毒、臓器が壊死して腐ってしまうなど、非常に危険な状態となります。

梅毒に対する特効薬が存在する現代医療では、こういった症状まで進行することは非常に稀になりました。

第4期梅毒は・・・

  • 臓器や血管など命に関わる重度の症状が現れる
  • 神経梅毒の症状が現れ日常生活に支障をきたすようになる
  • 現代ではここまで症状が進むことは少ない

梅毒の感染経路は?

梅毒は原因菌となる梅毒トレポネーマが体内に入ることで感染します。

この梅毒トレポネーマは、感染者の血液・精液・膣分泌液などの体液や、症状の出ている病変部に大量に存在しています。

梅毒の主な感染経路は性行為となり、粘膜同士の接触によって病原菌が体内に侵入して感染に至ります。また、セックスのみでなくオーラルセックスや男性同士のアナルセックスでも感染リスクがあります。

母子感染による先天性梅毒に注意

梅毒の感染経路で特に注意したいのが母子感染です。

梅毒に感染していることに気付かず妊娠したり妊娠中に梅毒に感染してしまうと、母子感染によって胎児まで梅毒に感染してしまう可能性があります。

胎児が梅毒に感染してしまうと流産・早産や先天性梅毒の原因となります。

同性愛者の男性の感染者が増加中

日本では梅毒感染者が急増していますが、その中でも特に男性同性愛者(MSM:men who have sex with men)の感染者が増えています。

現在、特に男性同性愛者(MSM:men who have sex with men)の中で、HIV感染症および梅毒の流行がみられている。感染症発生動向調査からみた国内の流行状況からは、梅毒感染者の約8割を男性が占めており、男性感染者の多くが同性間の性交渉による感染であることが明らかにされている。

国立感染症研究所

前述の感染経路でも書きましたが、男性同性愛者同士の性行為は皮膚に傷がつきやすいため感染率が高いことが原因の一つと推測されます。

梅毒を予防するには?

梅毒の予防についてですが、コンドームを使用することである程度防ぐことが可能だと考えられます。

ただし、梅毒の感染経路は性器同士の接触のみではなく、オーラルセックスや病変部との接触でも感染リスクがあるため、完全に予防することはできません。

梅毒のみならず、性感染症を予防するためには不特定多数との性交渉を避けるようにし、パートナーとも一緒に検査を行うなど、日ごろからの注意が必要だと言えます。

梅毒の治療方法は?

梅毒の治療方法ですが、梅毒トレポネーマに有効な抗菌剤の投与が行われます。一般的にはペニシリンの服用になりますが、ペニシリン・アレルギーを持つ方には塩酸ミノサイクリンなどが用いられます。

梅毒の進行状況に応じて変わりますが、薬の服用期間は2~12週間が目安となります。

第1期梅毒:2〜4週間
第2期梅毒:4〜8週間
第3~4期梅毒:8〜12週間

梅毒についてのまとめ

梅毒についてをまとめると以下のようになります。

特徴
  • 非常に感染力が強い
  • 感染からの期間で症状が異なる
  • 間に長い潜伏期間を挟む
症状 第1期梅毒

  • しこりや潰瘍ができる
  • リンパが腫れる
  • 時間とともに症状が消える

第2期梅毒

  • 風邪のような症状がでる
  • 梅毒特有の症状が現れ始める
  • 個人差はあるものの時間とともに症状が消える

第3期梅毒

  • ゴム腫と呼ばれる大きなしこりができる
  • 結節性梅毒などの症状が現れる
  • 現代ではここまで症状が進むことは少ない

第4期梅毒

  • 臓器や血管など命に関わる重度の症状が現れる
  • 神経梅毒の症状が現れ日常生活に支障をきたすようになる
  • 現代ではここまで症状が進むことは少ない
感染経路 性行為・オーラルセックス・母子感染など
予防方法 コンドーム着用も有用だが、感染経路が多く確実に予防する方法はない
治療方法 抗菌剤の服用(ペニシリン等)

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